いよいよ新一万円札の顔に! ドラマで楽しみながら知るその“実像”
2024.03.22
2024年7月から、いよいよ渋沢栄一が肖像として図柄となった新一万円札が発行される。しかし、偉人としてその名を残していることは有名だが、私たちは彼について本当のところどのくらいのことを知っているだろうか。新札発行に先立ち、その生涯を描いたNHKの大河ドラマ「青天を衝け」がチャンネル銀河で4月よりCS初放送される。大河ドラマならではの見どころを楽しみながら、その実像をも知ることができるうってつけの機会だ。
意外と知られていない? 渋沢栄一の生い立ちと偉業
NHKの大河ドラマで丹念に描かれたその全体像
時代の大渦に翻弄され、挫折を繰り返しながらも、高い志を持って未来を切り開いた渋沢栄一の生涯を描いた大河ドラマ「青天を衝け」。記念すべきNHK大河ドラマ第60作にあたる今作では、近代日本経済の根本を作り上げた重要人物であり、幕末から昭和までいくつもの時代を駆け抜けた彼に初めて焦点を当て大きな話題となった。
しかし、新一万円札の肖像となることが発表されてから、初めてその功績を知ったという方も少なくないだろう。また、長命だったことから明治以降の活躍に注目しがちだが、実は幕末の農家に生まれ、討幕計画への参加、将軍家への仕官など、維新の激動にも深くかかわっている。まさしく「激動の時代を生き抜いた」という言葉が相応しい人物である。大河ドラマ「青天を衝け」では、そのような今まで知られていなかった前半生にもしっかりフォーカスして、魅力的に描いている。
少年時代に目覚めた商才…倒幕運動、そして仕官へ
なぜ栄一は“近代日本資本主義”の父となったのか
天保11(1840)年、武蔵国血洗島村で養蚕と藍玉作りを営む農家の長男として生まれた栄一。人一倍おしゃべりの強情っぱりで、いつも大人を困らせていた彼は、父・市郎右衛門の背中に学び、商売の面白さに目覚めていく。藍葉の不作により窮地に陥った父を助けるため、自ら藍葉の買い付けに行きたいと考えた栄一は、わずか13歳にして藍葉の買い付けを1人で行ったという。
やがて江戸を訪れた際に尊王論者・大橋訥庵や門下生の河野顕三に出会い、尊王攘夷の風を感じ草莽の志士に目覚めていく。そして、尾高惇忠や渋沢喜作とともに横濱焼き討ち計画を秘密裏に準備する栄一。攘夷決行のための武器や仲間を集め始めるも、尾高長七郎の猛反対にあい、あえなく断念。栄一は逆に幕府に追われる立場となり、喜作と一緒に京へ逃げる。そこで出会ったのは一橋慶喜の側近・平岡円四郎。そのことをきっかけとして、一橋家に仕官することになった。
かつて尊王攘夷に傾倒し、討幕の志士として動いていた栄一が、後の15代将軍・徳川慶喜に仕官するということ自体が当時の混沌とした雰囲気をよく表しているが、この選択が後の栄一の運命を大きく変えていく。
90年の生涯を描く本作を彩る豪華キャストたち
10代~晩年までの栄一を演じきった吉沢亮の胆力を見よ
長い生涯を丹念に描いた本作には数多くの人物が登場する。ここではその主要人物をピックアップ。当時、大河ドラマ初主演でまだ27歳だった渋沢栄一役・吉沢亮は、なんと13歳から91歳までの役柄にそれぞれなり切り堂々と演じた。波瀾の生き様を各々の時代背景のもとに演じ分けるという制作側の難しいお題に見事応え、視聴者を大いに驚かせた。
栄一の従兄で相棒でもある渋沢喜助役に高良健吾を抜擢。大河ドラマへの出演は同じく幕末の日本を描いた2015年の『花燃ゆ』で高杉晋作を演じて以来2度目となった。栄一と同じく波瀾の人生を生きた喜作。函館での戦ののち捕らえられ牢に入れられていた彼と栄一の再会シーンは放送当時、広く感動を呼んだ。
栄一の妻・渋沢千代役には、着々とのそのキャリアを進め、2018年の『西郷どん』、2019年の『いだてん〜東京オリムピック噺〜』に続き、今や大河ドラマ常連となりつつある橋本愛を抜擢。栄一との結婚前は柔らかくて周囲から愛される女性、結婚後は栄一を陰で支え、母としても芯の強さを感じさせる役柄を繊細な演技で魅せた。
栄一の人生に大きな影響を与える人物・徳川慶喜役として草彅剛が登場。吉沢演じる“動”の栄一に対して、“静”の芝居を見せ、慶喜のミステリアスな部分を見事に演じ、第59回ギャラクシー賞テレビ部門個人賞を受賞。「後世に残る徳川慶喜像を作り上げた」と絶賛された。
栄一を慶喜に引き合わせた、物語前半のキーパーソン・平岡円四郎役にベテラン俳優・堤真一を配役、その確かな演技力で脇を固めた。特に慶喜との初対面のシーンでは、給仕を命じられた円四郎が作法を知らずに茶わんいっぱいに飯を盛ってしまい、慶喜自ら茶わんとしゃもじを手に取り、円四郎に給仕の作法を指導。2人が打ち解けていく様子を印象的に表した名シーンとなった。
パリ万博に薩摩藩としての参加を実現させた薩摩藩士・五代才助役を連続テレビ小説『あさが来た』で同役を演じたディーン・フジオカが再演したことは女性を中心にSNSで話題に。「五代様」として一大ブームとなった同役を『青天を衝け』ではどのように演じ分けているのか、実際にドラマを観てぜひ確かめてほしい。
慶喜の異母弟であり栄一とともに渡欧した“プリンス・トクガワ”こと徳川昭武を板垣李光人が演じた。板垣は大河ドラマ『どうする家康』の井伊直政役を好演したことも記憶に新しい。
そして現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」で関白家の長男で歌人としても名高い藤原公任(きんとう)を演じている町田啓太が、新選組・土方歳三役で出演。『光る君へ』では“色男”役ぶりが注目された町田だが、本作では、悲劇の副長・土方を力強く演じ、その役柄の広さには改めて目を見張る。
当時は岡田健史という芸名で活動していた俳優・水上恒司が尾高家の末っ子・尾高平九郎役に。水上は、2023~2024年放送の連続テレビ小説『ブギウギ』村山愛助役で高い評価を受けたが、本作当時はその熱演を見逃してしまった視聴者もいるだろう。今回改めて要注目だ。
ドラマを観る前に基本を知っておこう
渋沢栄一“3つの偉大な功績”
偉大な功績①:日本初の株式会社設立
一橋家に仕え、後の第15代将軍徳川慶喜の家臣となり、27歳のときにパリ万博に同行。先進諸国の先進的な技術や産業、社会の内情を広く見聞し、近代的な社会制度を知り帰国。渋沢栄一が帰国したときには、徳川慶喜は大政奉還を行い、静岡に蟄居していた。時は明治維新、先進的な考え方を学んだ29歳の栄一は、欧州の株式会社制度を取り入れ、日本初の株式会社「商法会所」を設立。日本に資本主義をもたらすこととなった。
偉大な功績②:大蔵省での新しい国づくり
幕府の瓦解後、明治新政府(民部省・大蔵省)に出仕して「官(官僚)」の一員となる栄一。このときはまだ29歳。杉浦譲ら特命チーム・改正掛(かいせいがかり)に集まった旧幕臣たちとともに、租税の改正、貨幣や郵便制度、戸籍法の確立、廃藩置県、国立銀行条例の制定、今や世界遺産となっている富岡製糸場の設立など、新たな国づくりのためまい進する。
偉大な功績③:500以上の企業を設立
33歳にして明治政府の大蔵省を辞めて、そこから民間の育成に従事していった栄一は、実業家を引退する76歳までに500以上の企業の設立に関わり、約600の社会公共事業・教育機関の支援や民間外交に尽力した。国のインフラとなるような大企業を含めたその一部をご紹介。
・第一国立銀行(現在のみずほ銀行)
・王子製紙
・東京電力
・東京ガス
・KDDI
・東京海上保険株式会社
・東京証券取引所
・サッポロビール株式会社
・キリンビール株式会社
・帝国ホテル
・田園都市株式会社
・一橋大学
・東京経済大学
・二松学舎大学
・日本女子大学
・東京女学館
・日本赤十字社
・聖路加国際病院 など
渋沢栄一は現代の私たちにも
より身近な存在に
新一万円札の新たな顔になるということで、現代に生きる私たちにとってもより身近な存在になる渋沢栄一。彼が過去の多くの偉人たちと関わり、今でも身近な会社として存在している多くの企業の設立にも関与していたことを初めて知る方も多いはず。大河ドラマ「青天を衝け」をきっかけに、その偉大な功績を辿ってみてはいかがだろうか。
(新)大河ドラマ「青天を衝け」(チャンネル銀河 歴史ドラマ・サスペンス・日本のうた)
4月4日(木)放送スタート
毎週月~金曜 深0.00~1.00 ※再放送あり
【番組ページ】
https://www.ch-ginga.jp/detail/seiten/